小説作法 〜三人称の種類と使い方〜

小説の魅力は、その物語に登場するキャラクターや背景によって読者が異なる世界に引き込まれることです。

一方で、一人称以外の文体である「三人称」を用いることで、さらに多様な視点から物語を描くことができます。

本記事では、三人称の種類と使い方について解説し、そのメリットやデメリット、具体的な例を交えながら紹介します。

三人称とは

三人称とは、物語の主人公や登場人物が語り手ではなく、第三者(彼、彼女、あの人、その人など)の視点で物語が語られる文体です。

三人称は、複数のキャラクターの視点や感情を表現しやすく、また広い視野で物語の展開を追えるため、様々なジャンルの小説で利用されています。

三人称の種類

三人称にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる効果や表現が可能です。

以下に、主な三人称の種類を紹介します。

1. 三人称制限

三人称制限は、特定のキャラクターの視点に限定して物語を進める文体です。一人称に近い親密さがありながら、より客観的な描写が可能です。

また、複数のキャラクターの視点を切り替えることで、物語に奥行きを持たせることができます。

2. 三人称全知

三人称全知は、語り手が登場人物の感情や思考に完全にアクセスできる文体です。

語り手は全てのキャラクターの心情や背景を把握し、読者に伝えることができます。

このため、物語の展開や登場人物間の関係性を広い視野で捉えることが可能です。

3. 三人称客観

三人称客観は、語り手が登場人物の内面にアクセスできず、行動や言葉を通じてのみ物語を進める文体です。

客観性が強いため、登場人物の心情や感情は読者の解釈に委ねられます。

これにより、物語の謎解きやサスペンス要素が強調されることがあります。

三人称のメリット

1. 広い視野で物語を描ける

三人称では、複数のキャラクターの視点や感情を表現することができるため、物語の展開や背景をより広い視野で描くことができます。

このため、筆者が創造する世界観やストーリーが、より豊かに読者に伝わることが期待できます。

2. 複数の登場人物の視点を活かせる

特に三人称制限や三人称全知では、複数のキャラクターの視点を切り替えることができます。

これにより、物語に奥行きを持たせるだけでなく、登場人物間の関係性や葛藤をより鮮明に描くことができます。

三人称のデメリット

1. 感情移入が難しい

一人称に比べて、三人称では登場人物の内面や感情に寄り添うことが難しく、読者が感情移入しにくくなることがあります。

しかし、三人称制限や三人称全知を活用することで、特定のキャラクターの心情や成長を描き出すことができます。

2. 過剰な情報提供になりがち

三人称全知では、語り手が全てのキャラクターの心情や背景を把握し、読者に伝えることができるため、時に過剰な情報提供になりがちです。

これを避けるためには、登場人物の内面を必要最低限に抑え、物語の展開や謎解きに重点を置くことが重要です。

三人称の使い方:実践編&活用しやすいジャンル

それでは、三人称を用いた小説作法について、具体的な例と活用しやすいジャンルを挙げて解説します。

1. 視点の切り替えを活用

三人称制限や三人称全知を活用して、物語の視点を複数のキャラクターに分け、それぞれの視点で語らせることができます。

例えば、一つの出来事について、主人公ともう一人の登場人物がそれぞれの視点で語ることで、物語に奥行きや幅を持たせることができます。

視点の切り替えは、章ごとやシーンごとに行うことで、読者に混乱を与えずに効果的に展開を進めることができます。

活用しやすいジャンル:ミステリーやファンタジーなど、複数のキャラクターが重要な役割を持つ物語では、視点の切り替えが効果的です。

2. 登場人物の心情や動機を描く

三人称制限や三人称全知では、登場人物の心情や動機を描くことが可能です。

これにより、物語の中で登場人物が成長したり、葛藤を乗り越えたりする様子をリアルに表現することができます。

ただし、過剰な情報提供を避けるためにも、適切なバランスで心情や動機を描くことが重要です。

活用しやすいジャンル:ドラマや恋愛小説では、登場人物の感情や成長が重要な要素となるため、心情や動機の描写が効果的です。

3. 情報の伏線や回収を工夫する

三人称全知を利用することで、物語の中で伏線を張り、後で回収することができます。

これにより、読者に驚きや感動を与えることができます。

ただし、伏線や回収が分かりやすすぎると、物語の予測が容易になってしまうため、適度な情報量とタイミングで展開することがポイントです。

活用しやすいジャンル:サスペンスやファンタジーでは、伏線や回収が物語の魅力を引き立てる重要な要素となるため、情報の伏線や回収の工夫が効果的です。

まとめ

三人称を効果的に活用することで、緻密なキャラクター描写や複雑な物語構造を創造することができます。

また、活用しやすいジャンルに応じて、視点の切り替えや心情の描写、情報の伏線や回収を工夫することで、より魅力的な物語を作り上げることができます。

ミステリー、ファンタジー、ドラマ、恋愛小説など、様々なジャンルで三人称の使い方を適用して、自分だけの素晴らしい物語を描いてみてください。

この記事で紹介したポイントを参考に、三人称を効果的に活用して、読者に感動や驚きを与える物語を創造しましょう。

← Go home
;